私はおじいちゃんたちを知らない、会った事も無い。
父方のおじいちゃんは、私の生まれる前に亡くなった。
母方のおじいちゃんは、母が若い頃におばあちゃんと離婚してから音信不通。
母が言うには、私は自分の父親に似ているらしい。
手先が器用で、物を作るのが好きだったんだって。
男の人の繊細さについて考えてたら思い出した。
私に似ているというおじいちゃんの事。
中学の頃、母は働きに出ていて昼間は家に居なかった。
学校さぼって家に一人の時には、よく家の中を探ってた。
あちらこちらの引き出しを開けて、中身を見ていた。
見たくないものも沢山あったっけ。
その時に、引き出しの奥から手紙を見つけた。
おじいちゃんから母への手紙。
さすがに迷ったんだけれどね、結局読んだ。
奇麗に整った文字。
なんとも繊細な文章。
「貴方と過ごした日々が走馬灯のように巡ります。」
覚えている一文。
手紙全体に、細い細い糸で編まれた様なイメージを受けた。
初めて男の人の繊細さを目の当たりにした。
何度も読んだというか、眺めてたというか。
物悲しさを感じるこの手紙を書いた人の血が
私にも流れていると、理由も無く確信してた不思議な時間。
昼下がり、セーラー服を着たまま、開けっ放しの引き出しの前で座り込んで
顔さえ浮かんでこない知らない人の手紙を眺め続ける。
ただただ、血を感じながら。
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