去年の10月頃、まだ霧の中を歩いているくらいの時期。
彼女が会いに来てくれた。
どこかの教室?大学?
明るい日が差し込む、広い部屋。
私たち以外にも、沢山の人がいてがやがやしていた。
知ってる顔は無かったけれど、居場所の無い時の、独特の不安は無かった。
何事もなかったように、
彼女は少しはにかみながら、片手をあげて一言
「よっ。」
私も何もなかったように、
「お久しぶりです、お元気ですか?」
何一つ変わらない彼女。
最後に見た時と同じ、髪型も体型も笑顔も年齢も。
きっと、私は彼女よりも年を取ってる。
でも、私の解れていく心も、変わらない。
かけらも、悲しみの色は無い。
たわいもない会話を、笑顔の中で交わした後、
彼女は、
「じゃ、もう行くわ、飛行機の時間やねん。」
話足りない私は、
「連絡先、教えて。電話するから。遊びにも行きたいし。」
快く携帯の番号を教えてもらって、それだけで安心した。
来たときの様に、片手をあげて去って行った。
ただ、いつものように背中ごしに手を振るのではなく、
振り向き、私の目を見て手を振ってくれた。
「ほなな、また。」
その後、すぐに電話してみた。
受話器からは、何の音もしない。
「タイだもんね、仕方ないなよな、遠い外国だもん。」
簡単に納得し、受話器を置く。
でも、全く悲しくも淋しくもなかった。
体の真ん中に、柔らかい温もりが残ってたから。
ごめんね、遠い場所でも心配してもらってるのかな。
いつか会えたら、お酒奢るね。
また、会いに来てね、いつでも待ってるよ。
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